
「何!これっ?」
「はい!これは未完成のピアノカバーです。」
「なぜ? あのスペインのサグラダフアミリ?」
「はい! 未完成のところがそうなんです。」
「未完成って言っても どの作品だって 途中経過の中では未完成でしょ?」
「はい!いつ完成するかわかんないくらい長い期間にわたる。 その単位が 私の中では サグラダファリアなんです。」
ガウディが設計したこのスペインの大聖堂は1882年着手して未だ完成していないんですって。

でも2026年には完成するらしいよ。(下の写真は完成図)

これまでの私は ほかの人がびっくりするくらい 仕上げるのが早かったんです。
その私が なぜ いつできるかわからない 緩やかな作品を使いながら手掛けているのといえば
ハンガリーの風が吹いたんです。
「ハンガリーの風って?」
実は私の初めての海外旅行がハンガリーだったんです。
初めてということもあり
目に触れるもの 手にするものすべてが新鮮で 感動の日々でした。
それにハンガリーは社会主義国家から共和国になって10年しかたってなく経済的にも これからの国でした。
だから日本がまだ こんなに発展していない私が小さかった頃によく似た風景や人の温もりがそこあったのです。
そして大好きな手作りの民芸品を多く目にすることができました。
村ごとに刺繍の模様や色が変わりとても興味深いものでした。
「だけど ハンガリーと このピアノカバーと どう関係あるの?」
「はい!この作品はハンガーりの刺繍で仕上げようと思っているのです。」
実はこれを手掛ける2日前
ハンガリーから日本にやってきた女性が
ハンガリーの両親に日本のクールな製品を持って帰る番組を見たその瞬間 スイッチが入ったのです。
その番組にはこの刺繍のことは何にも触れていません。画面のどこにも出てきません。
でも一瞬に私の頭の中にあの時感じたいろんな思いが甦ったのです。
だから できるだけ丁寧に 細やかに 手をかけた作品を 作ろう。
未完成でもサクラダフアミリアみたいに、未完成でも楽しめる。
そんな作品にしていこうと
いつもの私なら 思いもよらない発想です。
それが「ハンガリーの風」なんです。
本当は白の刺繍糸で仕上げたかったのですが、白が無くなったのでブルーを足して刺しています。
ブルーがなくなったら…その時考えることにしよう。
いつ完成するか わかんないので白い糸が黄色に色変わりするかもね。
とっても せっかちな私が この緩やかさを 楽しめるようになった私の変化に 驚きです。